医療事故調査制度法案法制化に関する声明
本日、「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案」が成立し、医療法改正によって、平成27年10月1日より、第三者医療事故調査機関の設置を含む新たな医療事故調査制度が施行されることが決定しました。
私たちは、この制度により医療事故の原因究明をしっかり行い、再発防止に役立てることにより、医療の質と安全性の向上に資することになると期待し、法案成立は大きな第一歩と評価し、ご尽力いただいた皆様に感謝申し上げます。
しかし、上記法案は19もの法律の改正を行う一括法案であり、与野党で熾烈に意見が対立する法律改正が含まれていました。そのため医療事故調査制度に関する審議には、限られた時間しか割くことができませんでした。その中でも参議院厚生労働委員会では医療事故調査制度に関する参考人陳述が行われ、委員による活発な質疑も行われました。その結果、同委員会で下記の附帯決議がなされました。
私たちは、本年5月18日付にて各政党に対し「医療事故調査制度創設のための集中審議を求める要望書」を提出し、私たちが求める適正な医療事故調査制度のあり方を提示しました。上記附帯決議は私たちの意見を入れていただいたと評価しております。
医療事故調査制度については、来年10月の施行に向け、ガイドラインを策定することが予定されています。附帯決議で述べられているように、医療事故調査制度が中立性、透明性、公正性及び専門性を確保して医療事故の原因究明及び再発防止を推進し、医療の質と安全性の向上に資する制度として運用されるよう、適切なガイドラインが策定されなければなりません。
私たちは、医療事故調査制度が患者・家族及び医療者に受け入れられ、社会に信頼される制度となるよう、ガイドライン策定に関し意見(後述の課題など)を述べる等、今後も行動を続けます。皆様のご理解とご協力をお願い致します。
記
信頼される医療事故調査制度にするために検討すべき主な課題
1 遺族への説明・報告
*事故直後、遺族にカルテ等の資料を渡し、事実を共有する
・そして、遺族のおもいや疑問点を丁寧に聴取する
*原因究明の調査報告書を遺族に渡して、しっかり説明し、理解・納得を得る
2 調査メンバーのあり方
*中立性・透明性・公正性を確保するために
・調査及び運営に医療事故被害者で医療事故・再発防止に取り組む者の参加が必要
・多岐にわたる専門家:医療者の他、事故調査分析の専門家、医療機器製造業者、システム担当の専門家など
3 調査の仕組み
・中立性・公正性を担保するためには、都道府県単位ではなく、ブロック単位にした方がよい
・利益相反の防止、調査分析の均一性の早期確立が必要
4 調査範囲
届出を要する事故の範囲が「事案の発生を予期しなかったものに限る」としている
*届出の判断を当該医療機関(管理者)や 当該の医療者だけでする場合、大半の事案が合併症として届出されないのではと懸念する
5 調査依頼の拡大
・医療機関が届出しない事例や医療機関の管理者による意図的な事故隠しを少なくするために、 遺族や病院職員が第三者機関に相談が出来る窓口を設ける
・第三者機関が精査して調査が必要と判断した場合は、当該医療機関に調査を要請する仕組みを組み入れる
6 調査費用:公的な費用投入
・日本の医療安全と質の向上に資するための事故調査・再発防止を目的とする第三者機関の運営自体に、公的費用補助を行い、国として医療事故防止に取り組む
・院内事故調査は公的補助を行い、医療機関に全負担を求めない
・遺族の負担する費用は、当初は無料として開始すべき
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